R3予備論文 刑法


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~感想~

・72分かかった。少しオーバーしたので焦った。推定D

・かなり自信がない。どう構成するか混乱した。

・答案構成では書いたのに窃盗罪を落とした。抽象的事実の錯誤も書けていない。

~再現答案~

第1 乙の罪責

1 乙が、両手でXの首を強く締め続けた行為に、殺人罪(199条)が成立するか。

⑴ 上記行為は、寝たきりの状態で弱っている抵抗できないXに対して行われたものであり、息をすることができないといえるので、X死亡の現実的危険性の有する行為であり、実行行為に当たる。また、上記行為によって、Xは窒息死しているので、因果関係もある。

⑵ そして、乙は殺意を有しており、Xが本心では死を望んでいないことを認識していたから、故意(38条1項)も認められる。

2 以上より、乙の上記行為に同罪が成立し、乙はかかる罪責を負う。

第2 甲の罪責

1 甲がYに本件段ボール箱を預けた行為に、犯人隠避罪(103条)の教唆犯(61条1項)が成立するか。

⑴ 「隠避」とは蔵匿以外の方法で官憲による発見・逮捕を免れされる一切の行為をいうところ、Yは甲から本件段ボール箱を受け取っており、「隠避」したといえる。そして、甲の上記行為は、Yの「隠避」を惹起させたといえ、「教唆し」たといえる。また、犯人自身が行う隠避は期待可能性の欠如の観点から、同罪の成立が否定されるところ、犯人が他人を教唆してまでその目的を達成しようとするのは期待可能性が欠如しているとはいえないので、同罪の成立は否定されない。

⑵ よって、上記行為に同罪の教唆犯が成立する。

2 同行為に、証拠隠滅罪(104条)が成立するか。

⑴ Yは本件段ボール箱を受け取っており、脱税に関する罪が成立するから、上記行為は、「他人の刑事事件」に当たり、上記行為は「隠滅」に当たる。

⑵ よって、上記行為に同罪が成立する。

3 甲が本件帳簿にライターで火をつけてドラム缶の中に投入した行為に、建造物等以外放火罪(110条1項)が成立するか。

⑴ 上記行為は本件帳簿の焼損を惹起させる行為であるから、「放火」に当たる。「焼損」とは、火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続し得る状態をいうところ、本件では、本件帳簿を通して漁網が独立に燃焼を継続し得る状態に至っているから、「焼損」に当たる。「公共の危険」とは、延焼により生命、身体、財産に対して危害を加える抽象的危険をいうところ、漁網が燃え上がり、近くにいた5名の釣り人が発生した煙に包まれ、その一人が防波堤に駐車していた原動機付自動車に延焼するおそれも生じたので、「公共の危険」があるといえる。

⑵ もっとも、甲は上記行為時、漁網、自転車、釣り人の存在をいずれも認識していなかったため、故意がないのではないか。「公共の危険」が故意の認識対象に含まれるかが問題となる。

ア 「よって」という文言から、「公共の危険」は構成要件的要素とはならず、故意の認識対象に含まれないと考える。

イ したがって、甲は故意があるといえる。

⑶ よって、上記行為に同罪が成立する。

4 甲が、乙の絞首行為を制止させずにその場から立ち去った行為に、同意殺人罪(202条)の幇助犯(62条1項)が成立するか。

⑴ まず、乙は上記行為の際、甲が帰宅したことに気付いていなかったが、同罪の幇助犯が成立するか。片面的幇助犯の成否が問題となる。

ア 幇助犯の処罰根拠は、正犯の行為を容易にさせる点にあるから、幇助行為による物理的因果性が認められれば、片面的幇助犯が成立すると考える。

イ 本件で、上記行為という不作為によって、乙は誰にも止められることなく、容易にXの首を絞めることができており、上記行為は、乙のXに対する殺害を物理的に容易にしたといえ、物理的因果性が認められる。

ウ したがって、片面的幇助犯が成立する。

⑵ もっとも、上記行為は不作為によってなされたものであるが、「幇助した」といえるか。不作為による幇助犯の成否が問題となる。

ア 不作為によっても、正犯の行為を容易にすることができるため、構成要件的同価値性が認められる場合、すなわち、①法的作為義務があり、②かかる義務を行うことが可能かつ容易であったのになされなかった場合に、不作為による幇助犯が成立すると考える。

イ 本件で、甲乙宅には、甲乙Xの3人しかおらず、Xを助けることができるのは、甲以外存在しないから、甲にはXの生命という法益が排他的に依存しており、Xを救護する法的作為義務が認められる(①)。そして、甲は救急車を呼んだり、乙の首絞め行為を止めたりするなどという容易な救護行為をすることが可能であったといえ、甲はかかる義務を懈怠したといえる(②)。

ウ したがって、上記行為は「幇助した」といえる。

⑶ また、甲は、そのまま死なせてやろうと考えていたことから、殺意がある。なお、甲はXの上記真意を認識していないから、殺人罪(199条)の故意が認められず、同罪は成立しない。

⑷ よって、上記行為に同意殺人罪が成立する。

5 以上より、甲に、①犯人隠避罪の教唆犯、②証拠隠滅罪、③建造物以外等放火罪、④同意殺人罪が成立し、①と②は観念的競合(54条1項前段)になり、それ以外とは併合罪(45条前段)となり、甲はかかる罪責を負う。