note開設と論文分析について

 

 お久しぶりです。

 今まで、はてなブログで記事を書いていたのですが、はてなブログではpdfの添付がうまくできなかったので、noteを開設しました。

note.com

 

 別にはてなブログを消去する理由もないので、そのままにしておきます。(古い記事はドラフトに戻してます。)

 

 令和3年予備試験論文式試験の敗因分析を書きました。noteにそのpdfを添付しました。

 

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R3予備論文 民訴法

~感想~

・68分かかった。推定C。

・共同訴訟参加はかなり面くらった。伊藤塾生なら少なくともそうだと思う。要件充足ゲーとはいえ、検討したことがなかったので、書いているときは本当に怖かった。

・設問1⑵について、権利主張参加は両立するからおかしいと思った。詐害防止参加は論証自体用意していたし、現場でも思いついたが、過去問にないし、今まで書いたことがないし、95%出ないと聞いていたことから、まさか違うだろと思って書かなかった。というより、怖くて書けなかった。また、明示的な詐害的な事情があったわけでもないと思ったから、まわりの受験生を意識して書かなかった。

・設問2もよくわからなかった。Yへの既判力の話は特に分からない。すでに残り時間も少なかったので、かなり雑な論述になってしまっている。三段論法なんて程遠い。

~再現答案~

第1 設問1

1 ⑴について

  Yが本件訴訟に共同訴訟参加(民事訴訟法(以下法令省略)52条)をすることができるためには、①Yが本件訴訟の当事者適格を有しており、②Yが本件訴訟の判決効の及ぶ地位にあることを要する。

⑴ ①について

ア 当事者適格とは、特定の権利又は法律関係について、当事者として訴訟を追行し、本案判決を求め得る資格をいうところ、その判断に当たっては、実体法上の帰属態様を基準すべきである。

イ 本件についてみると、本件訴訟で仮にXの主張が認められ、Xが勝訴した場合、本件不動産についてYが単独所有であることが確定し、Yに本件不動産の全部の所有権移転登記がなされる。また、Yが本件訴訟に参加して、本件貸付債権の弁済を主張し、それが認められた場合、Xは債権者代位訴訟(民法423条以下)たる本件訴訟の当事者適格を失う関係にある。そうだとすれば、Yは本件訴訟の実体法上の帰属態様について利害関係を有するといえ、上記資格があるといえる。

ウ したがって、Yに本件訴訟の当事者適格が認められる。

⑵ ②について

  本件訴訟は、前述のとおり、債権者代位訴訟であり、Xは、Yのために、本件訴訟を提起しているから、XはYの法定訴訟担当である。そうだとすれば、Yの手続保障は代替的に保障されているといえ、訴訟の勝敗を問わず、Yに確定判決の判断内容の後訴での通用力たる既判力(115条1項2号)が生じる(無条件肯定説)。そのため、Yは本件訴訟の判決効の及ぶ地位にあるといえる。

⑶ よって、Yは本件訴訟に共同訴訟参加することができる。

2 ⑵について

  Yは、Xに対する本件貸付債権の不存在確認訴訟を提起して、本件訴訟に片面的独立当事者参加(47条)することができるか。

⑴ まず、本件訴訟において、上記不存在確認訴訟を提起することは二重起訴禁止(142条)に反しないか。同条の趣旨は、被告の応訴の煩、訴訟不経済、矛盾判決の危険の防止をいい、当事者及び訴訟物が同一の場合に、同条に反するといえる。本件では、XとYとで当事者が同一である上、上記訴訟は、給付訴訟と反対形相の関係にあり、XがYに対して提起する本件貸付債権の給付訴訟と訴訟物が同一である。そのため、同条に反するとも思えるが、47条の趣旨は、三者間で対立・牽制し合う訴訟を矛盾なく解決する点にあるから、142条の趣旨に反せず、同条に反しない。

⑵ 次に、Yは民法423条の5により、本件訴訟の当事者適格を有する。

⑶ 本件で、Yは権利主張参加をしており、47条の上記趣旨から、請求の趣旨レベルで非両立の関係があれば、独立当事者参加し得るところ、Yは、Zに対しては請求を定立していないから、この点については問題がない。しかし、Yは、Xに対し、本件貸付債権の不存在確認訴訟を提起しているところ、前述のとおり、訴訟物が同一である上、請求の趣旨においても、同一であるといえるから、非両立の関係にあるとはいえない。

⑷ よって、Yは、本件訴訟に独立当事者参加することはできない。

第2 設問2

1 本件判決の効力である既判力がAに及ぶのではないか。既判力の主観的範囲が問題となる。

⑴ 既判力の正当化根拠は手続保障に基づく自己責任であるから、「当事者」(115条1項1号)のみにしか及ばないのが原則である。

⑵ よって、Aには本件判決の効力である既判力が及ばないとも思える。

2 もっとも、本件では、Aと同様にYの債権者であるXが本件訴訟を追行しているから、「他人のために原告…となった場合」に当たり、Aに本件判決の効力が及ぶのではないか。

Yは訴訟告知(53条1項)を受けたので、補助参加(42条)の利益を有するYには本件判決の既判力(53条4項、46条柱書 参加的効力)が及ぶが、Yは、本件訴訟に参加しておらず、Yは実際に本件訴訟の訴訟追行をしているわけではない。そのため、利害対立がある他の債権者の訴訟追行だけでは、上記正当化根拠である手続保障が充足されているとはいえず、Xは「他人のために原告…となった場合」に当たらない。

また、Aは、Xを選定しているわけではないため、XはAの任意的訴訟担当であるともいえない(30条)。さらに、本件訴訟は、一般債権者であるAにとって、事実上の利害関係しか有さず、法定訴訟担当にもならない。

3 以上より、本件判決の効力はAに及ばない。

 

R3予備論文 商法

~感想~

・68分かかった。推定C

・最初、ちらっと問題見た感想としては、簡単だなと感じたが、しっかり読み始めてから難しくて混乱した。設問1と退職慰労金の典型論点が勝負だと思ったので、そこは丁寧に検討したつもり。本問の特殊事情をしっかり検討できたかというとそれは疑問。

~再現答案~

第1 設問1

1 乙社が、甲社に対して本件代金を請求できるためには、甲社を代表してしたCの行為が、甲社に帰属している必要がある。

  本件で、Cは甲社の代表取締役会社法(以下法令省略)349条4項)ではなく、甲社から代表権を与えられていないので、無権代理行為(民法113条1項)として、Cの行為は甲社に帰属しないのが原則である。

2 もっとも、乙社は、取引基本契約の際、Cは、契約書に「代表取締役副社長C」と記名してFに代表者印を押印させており、これにより、乙社の代表取締役はCを甲社の代表者と信じているから、Cは表見代表取締役(354条)に当たり、Cの行為が甲社に帰属すると主張する。

⑴ まず、同条の趣旨は、会社の犠牲の下に外観を信頼した第三者を保護するという権利外観法理にあるところ、「会社を代表する権限を有するものと認められる名称」は、第三者からみて会社の代表者と信じるに足りる程度の外観を備えている必要がある。

  本件では、Cは、自ら「代表者取締役副社長」と名乗って取引先と交渉しており、取引基本契約の際も、契約書に「代表取締役副社長C」と記名してFに指示して代表者印までも押印させているから、Cの名称は第三者からみて会社の代表者と信じるに足りる程度の外観を備えていたといえ、「会社を代表する権限を有するものと認められる名称」に当たる。

⑵ 「付した」とは、上記趣旨から、会社が明示的に付した場合のみならず、黙示的に付した場合も含まれると考える。

  本件で、Cは、Aと相談して了承を得た上で、Cを代表取締役に選定する臨時株主総会決議があったものとして株式総会議事録を作成し、Cを代表取締役に追加する旨の登記申請をし、その旨登記された。たしかに、これらCの一連の行動を、Bら他の取締役が察知することはなかったのであるから、BC間で度々経営戦略について対立していた事情を考慮すれば、甲社代表取締役であるBはCに代表権を付するとは考えられず、「付した」に当たらないとも思える。しかし、Cのかかる一連の行動についてAは承諾しており、Aは甲社株式を800株も保有している大株主であるから、Aを「株式会社」と同視することができ、甲社は上記名称を「付した」といえる。

⑶ 重過失は悪意と同視できるといえるから、「善意」とは善意無重過失をいうと考える。

  本件で、乙社の代表取締役は、甲社の代表取締役副社長として振る舞うCを信頼しており、さらに、上記のとおりCが代表取締役として行動し、代表取締役として登記もしていたという状況を鑑みると、上記のように信頼するのもやむを得ず、Cに甲社の代表権があると信じるにつき重過失もない。

3 以上より、Cは表見代表取締役(354条)に当たり、Cの行為が甲社に帰属するので、乙社は、甲社に対して、本件代金を請求することができる。

第2 設問2

1 甲社のBに対する本件慰労金の支給は無効であり、甲社は、原状回復請求(民法121条の2第1項類推適用)として、本件慰労金の返還を請求することが考えられる。

⑴ 本件慰労金退職慰労金であるが、「報酬等」(361条1項柱書)に当たるか。

ア 同条の趣旨は、お手盛りによる会社財産の流出を防止する点にあるところ、退職慰労金は、報酬の後払的性格を有するので、お手盛りに準じた弊害があるといえる。

  そこで、退職慰労金も「報酬等」に含まれると考える。

イ したがって、本件慰労金は「報酬等」に当たるので、株主総会決議(309条1項)が必要である。

⑵ もっとも、本件では、甲社のBに対する本件慰労金の支給に際して、上記決議を行わないでなされている。そこで、総会決議を欠く報酬の支給が無効とならないか。

ア そもそも、報酬等の支給に際して株主総会決議を要するのは、前述のように、会社財産の流出を防止し、報酬等の適正を会社所有者である株主に判断させる点にある。また、かかる決議を欠いた場合の規定は会社法上存在しない。そうだとすれば、かかる決議を欠く報酬等の支給は、民法の一般規定に従い、無効とするべきと考える。

イ したがって、本件慰労金の支給は無効であり、上記返還請求は認められ得る。

2 しかし、Bはかかる請求を拒むために、甲社の無効主張は信義則に反すると主張することが考えられる。

⑴ 本件慰労金は、本件内規に基づいて行われているところ、たしかに前述のとおり、支給に際して総会決議を経ていない。しかし、本件慰労金の支給は甲社株式を過半数以上持ったAの依頼に基づいてなされているから、総会決議を経たとしても、承認されることが明白である。そのため、重大な瑕疵とはいえず、上記支給は無効とはならないといえる。

  また、CはAの所持していた甲社株式をすべて相続して、上記支給を追認拒絶している。しかし、BとCは関係が悪化しており、対立関係にあったことを鑑みると、Cの追認拒絶は、Bに対する嫌がらせのために行ったと推認することができ、信義に反する形であったといえる。なお、乙は甲社株式を900株保有しているから、乙は甲社と同視できる。

⑵ よって、甲社の無効主張は、信義則に反するのでBの上記反論は認められ、本件慰労金の返還請求は認められない。

 

R3予備論文 民法

~感想~

・75分くらいかかった。設問1はそれなりに書けているので推定D

民法を最初に検討したのだが、ここまで時間オーバーしたことが今までなかったので、めちゃくちゃ焦った。そのため、どうせ考えてもわからないし、後に響くと思い、最後は適当に書いた。問題文読みながら、特定の話や契約不適合の話がちらついたので、問題文を読むのがそもそも遅くなった。

・設問1について、論ナビではAランク論点(複合解除)だったので覚えていたけど、論マスでは問題としてない論点だったので、書き方に苦戦した。

・設問2について、書くべき論点は思いつくが、どう書けばいいか混乱しまくって、よくわからなかった。悪い評価は覚悟している。

~再現答案~

第1 設問1

 本件ワイン売買契約及び本件賃貸借契約の両方を解除(542条1項1号)することができるか。

1 まず、本件ワイン売買契約(555条)について、本件ワインは、令和3年8月30日未明の落雷による火災が原因で生じた冷蔵倉庫甲の内部の異常な高温によって、本件ワインは飲用に適さない程度に劣化してしまった。そして、本件ワインは他に同種同等のものが存在しないから、本件ワインは売り物として売ることができず、本件ワイン売買契約の引渡債務は社会通念上履行不能(412条の2第1項)であるといえる。そのため、「債務の全部の履行が不能」に当たるので、Aは解除の意思表示(540条1項)をして、本件ワイン売買契約を無催告解除することができる。

2⑴ 次に、本件賃貸借契約(601条)について、Aは、上記火災を原因とする高熱によって、甲の配電設備が故障し、空調機能が喪失したので、履行不能解除することができると主張する。これに対し、Bは、同日深夜までに配電設備の修理は完了し、甲の空調機能は復旧し、その使用には何らの支障がなくなっていることから、社会通念上履行不能とはならないと反論することが考えられる。よって、本件賃貸借契約は解除できないとも思える。

⑵ もっとも、本件賃貸借契約は本件ワインを保管するために締結しており、本件ワイン売買契約と密接に関連しているから、上記本件ワイン売買契約の履行不能を契機に本件賃貸借契約も履行不能とならないか。

ア そもそも、ある一つの契約の履行不能は他方の契約の履行不能とはならず、一方の履行不能を理由に他方の契約を解除することはできないのが原則である。

  しかし、二つ以上の契約の目的とするところが、相互に密接に関連付けられていて、一方の契約の債務が履行されなければ、他方の契約の目的が全体として達成できないような場合には、一方の履行不能を理由に他方の契約を解除することができると考える。

イ 本件についてみると、Aは、Bとの本件ワイン売買契約の交渉の際、本件ワインの引渡日までに高級ワインの保存に適した冷蔵倉庫を購入し又は賃借することを予定していることをBに対して伝えていた。しかし、Aは事業計画に適した冷蔵倉庫を見つけることができなかったので、Bに対して、適切な規模の冷蔵倉庫が見つかるまでの当面の保管場所として同人の所有する甲を借りたいと本件賃貸借契約締結の際に伝えた。そうだとすれば、両契約は本件ワインを販売するという共通の目的で締結されており、Aが甲以外の冷蔵倉庫を購入又は賃借できなかった事情を踏まえると、本件賃貸借契約は本件ワイン売買契約を前提としており、相互に密接に関連付けられているといえる。

ウ したがって、本件ワイン売買契約の履行不能を契機に本件賃貸借契約も履行不能となる。

3 以上より、Aは本件ワイン売買契約及び本件賃貸借契約の両方を解除することができ、Aの主張は認められる。

第2 設問2

1 ⑴について

  Cが、本件譲渡担保契約の有効性について、第三者に対して主張することができるためには、契約の目的物が特定されている必要がある。

⑴ まず、前提として倉庫丙内の酒類の所有権が本件譲渡担保契約により譲渡されている必要がある。そこで、譲渡担保の法的性質が問題となる。

ア 譲渡担保の法的性質は形式的に考えるべきであるから、所有権的に構成するべきであると考える。

イ したがって、丙内の酒類の所有権(206条)が本件譲渡担保契約により譲渡され得る(176条)。

⑵ 次に、本件譲渡担保契約によれば、丙内にある全ての酒類を目的物として、占有改定の方法(183条)により引き渡すとしているから、第三者対抗要件(178条)を具備している。

⑶ もっとも、本件譲渡担保契約の目的物は特定されているといえるか。

ア 譲渡担保の目的物の特定性の判断は、目的物の範囲、種類、数量等に照らして判断すると考える。

イ 本件譲渡担保契約では、Aは、AのCに対する本件金銭消費貸借契約に係る貸金債務を担保するために、丙内にある全ての酒類を目的物としており、丙内の酒類を第三者に譲渡した場合には、遅滞なく同種同品質の酒類を丙内に補充するとされているから、目的物の範囲、種類、数量等が特定されているといえる。

ウ したがって、本件譲渡担保契約の目的物は特定されているといえる。

⑷ よって、Cは、上記有効性について、第三者に対して主張することができる。

2 ⑵について

  Dが、Cに対して、本件ウイスキーの所有権を主張することができるためには、自己が本件ウイスキーの所有権を有し、本件ウイスキーに本件譲渡担保契約の効力が及ばないことを要する。

⑴ DとAは、本件ウイスキー売買契約の際、本件ウイスキーについて所有権留保特約を付けているのに対し、前述のとおり、Cは本件譲渡担保契約により、本件ウイスキーの所有権を有している。そして、通常の営業の範囲内では、本件譲渡担保契約の効力が本件ウイスキーに及ぶところ、Aは通常の営業の範囲外の処分をしていないため、なお本件譲渡担保契約の効力が本件ウイスキーに及び、Dはその所有権を有しているとも思える。しかし、Aは、同年11月10日、本件ウイスキーの代金1200万円をDに支払わなかったので、これにより、本件ウイスキーの所有権の処分権限をDは第三者に対抗することができる。その結果として、本件譲渡担保契約の効力が本件ウイスキーに及ばなくなるといえる。

⑵ よって、Dは、Cに対して、本件ウイスキーの所有権を主張することができる。

 

R3予備論文 刑事実務基礎科目

~感想~

・95分(途中トイレに行った)。刑事単体で推定B、C

・事案自体に混乱することはなかった。読み解きやすい事案だったと思う。そのため、問題文の事情は比較的多く拾うことができたと思う。

・供述の信用性については、R1予備で出たから、当分出ないだろうと思って、ほとんど放置していた。後述の判断基準があっているのかわからないけど、論マスでやった規範を使った。使うべき場面を間違えたかもしれない。でも事実との一致等は書けているし、事実もほとんど拾える規範だから、問題はない気がするけど…。

~再現答案~

第1 設問1

1 小問1

  Aは本件被疑事実について、刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)207条1項本文、60条1項2号及び3号に当たるとして、勾留されているところ、本件の準抗告(429条1項2号)は各号(勾留の理由)に該当しないというものである。以下の通り、疎明資料ⓐ及びⓑを考慮して、Aは各号に該当しない。

⑴ 同項2号

ア 「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」とは、罪証隠滅の対象、その態様、その客観的可能性、主観的可能性により判断すると考える。

イ 本件についてみると、罪証隠滅の対象として、AのVやW等に対する威迫等による供述の変遷やAの友人等とのアリバイ工作が考えられるところ、ⓐによれば、Aに事件関係者と一切接触させないことを誓約するものであるから、Aは両親の監督の下、VやW等と接触することができず、罪証隠滅の客観的可能性が認められない。

  また、ⓑによれば、「Aには早く職場に復帰してもらい、継続的に働いてもらいたいです。」と記載されていることから、Aは会社の上司から信頼されており、この信頼は、仕事を今まで一生懸命やってきた成果といえるため、Aのような真摯な者が罪証隠滅をすることはなく、その主観的可能性は認められない。

ウ したがって、罪証隠滅のおそれはない。

⑵ 同項3号

ア 「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」とは、身を隠そうと伺われる事情、生活状況の安定性により判断すると考える。

イ 本件についてみると、ⓐによれば、Aの両親がAを両親の自宅で生活させ、両親が責任をもってAを監督する旨記載されているところ、Aは両親の監督下にあり、身を隠すことができないから、身を隠そうと伺われる事情はないといえる。

  また、ⓑによれば、AはAの勤務する会社にとって必要不可欠な人材であり、Aがいないと、Aが取ってきた商談が潰れてしまうほど、会社で重要な役割を果たしており、会社の上司も今後もAには継続して働いてほしいということを願っていることから、Aには継続的な収入があり、生活状況が安定しているといえる。

ウ したがって、逃亡のおそれはない。

⑶ よって、弁護人は上記のように準抗告申立書にⓐ及びⓑを添付すべきと判断したといえる。

2 小問2

裁判所は、以下の通り、弁護人の準抗告を棄却すべきと判断した。罪証隠滅のおそれと逃亡のおそれの判断は前述の基準により検討する。

⑴ 罪証隠滅のおそれについて

  罪証隠滅の対象は、前述のとおり、VやWの供述を変遷させたり、友人とのアリバイ工作をしたりすることが考えられるが、Aは犯行現場をもとにVやWのところへ行って、威迫をし、供述を変遷することができる。そして、疎明資料ⓐが存在しても、Aは両親の目を盗んで、外出し、VやW、友人のところへ行くことは容易にできるから、罪証隠滅の客観的可能性は認められる。また、Aは本件被疑事実を否認しており、犯行時刻頃には自宅にいた旨の供述をしていることから、罪証隠滅の主観的可能性も認められる。

  よって、Aには罪証隠滅のおそれがある。

⑵ 逃亡のおそれについて

  本件で、Aは本件被疑事実を否認しており、本件被疑事実は他人所有建造物等以外放火罪(刑法110条1項)と重大事件であるから、身を隠そうと伺われる事情が認められる。前述のとおり、Aは両親の目を盗んで、身を隠すことができるから、疎明資料ⓐがあっても、上記事情に変わりはない。また、たしかに、ⓑによれば、前述のとおり、継続的な収入は否定できないが、Aには貯金がほとんどなく、両親も収入は年金だけであるため、Aの生活は楽ではない。そのため、生活状況が安定しているとはいえない。

  よって、Aには逃亡のおそれがある。

第2 設問2

1 Wは、Aの犯人性についての供述をしているが、W供述の信用性が認められるかどうかは、ⅰ観察の正確性、ⅱ記憶の正確性、ⅲ犯人選別手続の正確性により判断すると考える。

2 まず、証拠②④によると、Wが、犯人の犯行を見ていた場所は、男が火をつけていた場所から6.8メートル離れていたが、付近に街灯があり、駐車場の敷地内にも照明があったので明るく、Ⓦ地点とⓍ地点の間に視界を遮る物は存在せず、Ⓦ地点に立ったWは、Ⓧ地点に立たせた身長170センチメートルの警察官の顔を識別できた。また、証拠⑤によれば、犯行当時、天候は晴れであった。そして、証拠⑮によれば、Wの視力は左右とも裸眼で1.2もあり、色覚異常もない。そうだとすれば、Wは犯人と目が合った際、はっきりと男の顔を見ることが可能であり、さらに、Wは男の顔を確認するために、すれ違って間近で見ていることから、観察の正確性が認められるといえる(ⅰ)。

  次に、証拠①②によれば、通報がされたのが令和2年1月9日午前1時3分というように、犯行直後にWは警察官に供述しており、④の実況見分調書も犯行から約2時間半足らずで作成されていることから、Wが27歳と若いことも鑑みれば、記憶の正確性も認められるといえる(ⅱ)。

  そして、証拠②によれば、30歳代くらいの小太りで、Wより身長が高く、170センチメートルくらいという犯人の身体の特徴、短めの黒髪で、眉毛が太く、垂れ目であったというマスクも眼鏡もしていない犯人の顔の特徴をWは確認している。証拠⑧⑨によれば、20枚の男性の顔写真の中にAがいることをWに告知せずに、Wに犯人がいるかの選別手続を行った際、Wは、前述の特徴と一致するAを引き当てることができている。かかる犯人選別手続の際、Aを誘導しているような事情もないから、犯人選別手続の正確性も認められる(ⅲ)。

3 以上より、検察官は、上記のように、W供述の信用性が認められると判断した。

第3 設問3

 検察官は、AとWとの間の遮へい措置(刑訴法157条の5第1項)のみを採るのが相当と考えているところ、ビデオリンク方式(157条の6第1項3号)を採用した場合、ビデオを通して、Wを証人尋問することになるが、対面で直接証人尋問するよりも、話し方や態度、ニュアンス等が伝わりにくい。前述のようにWの供述の信用性が高い本件では、対面で直接証人尋問を行う方が、W供述の説得力が増し、検察官に有利であるといえる。

また、Wは、傍聴人との遮へい措置(157条の5第2項)を希望しているが、傍聴人がいることによる緊張感を含めて信用性を吟味すべきであるから、かかる措置を採るのは相当でないといえる。

よって、検察官は上記のような思考過程を経たといえる。

第4 設問4

 見取り図等の図面を利用する場合には、裁判所の許可を要する(刑事訴訟規則190条の12第1項)ところ、その趣旨は、図面を示すことによって尋問者の望む答えを証人に促して証人に不当な影響を与えることがあるのでそれを防止する点にある。そうだとすれば、立会人の現場指示によって示した位置関係は、Wの供述の信用性に大きく影響を与える点で重要であるから、証人に視覚による影響を与えないようにするために、裁判長は、検察官に、記号が消されているか㋔の釈明を求めたといえる。

 

R3予備論文 民事実務基礎科目

民事実務基礎科目

~感想~

・85分かかった。民事単体で推定B、C

・問題解いているときにつまずくことはなかったので、受けた直後はA答案書けたなと思ったが、分析をしてからダメダメだなと感じた。

・要件事実の仕上がりが甘いということが露呈した。

~再現答案~

第1 設問1

1 ⑴について

賃貸借契約に基づく賃料請求権

2 ⑵について

被告は、原告に対し、55万円支払え。

3 ⑶について

① Xは、令和2年6月15日、Yとの間で、甲土地について、賃料を月額10万円で、本件賃貸借契約を締結した。

② Xは、Yに対し、①の契約に基づいて、甲土地を引き渡した。

③ 同年12月31日が到来した。

4 ⑷について

⑴ ⅰについて

ア 結論

抗弁として扱うべきである。

イ 理由

抗弁とは、請求原因と両立する、請求原因の法律効果の発生を障害、消滅、阻止するものであって、自己に有利な法律効果の発生を求める者が証明責任を負っている事実の主張をいう。本件の主張は、弁済の抗弁であり、前述の請求原因と両立するものであって、請求原因の法律効果の発生を消滅させる効果を有し、Yが立証責任を負っている事実の主張である。そのため、Yが主張すべき主張として、Yの抗弁となる。

⑵ ⅱについて

  本件の主張は、Yが抗弁として主張すべきものであり、Xにとって不利な事実を認める旨の主張であるから、先行自白に当たる。

第2 設問2

 後者の方法は、P(X)が債権者代位訴訟(民法423条以下)を提起しており、2つの訴訟が併存することになるから、訴訟経済や応訴負担等の観点から煩雑であり迂遠である。

 もっとも、前者の方法は、前述の賃料債権を被保全債権として、YのAに対する50万円の売掛債権に仮差押えの申立て(民事保全法(以下「民保法」という。)2条、13条1項、20条1項)をするものである。かかる手段によって、弁済禁止効(50条1項、5項、民事執行法(以下「民執法」という。)145条1項、民法481条1項)と処分禁止効が生じるので、Pは前者の方法を採ったと考えられる。

第3 設問3

1 ⑴について

⑴ ⅰについて

  譲受債権の発生原因事実

  譲受債権の取得原因事実

  債務者による承諾又は債務者に対する通知するまで譲受人を債権者として認めない旨の権利主張

⑵ ⅱについて

  ⒝に関する抗弁は、債務者対抗要件の抗弁(467条1項)であり、請求原因の法律効果の発生を阻止するものであるから、Qは「Xからの請求を拒むことができる」と回答した。

2 ⑵について

  敷金返還請求権は賃貸借が終了し、賃貸物を明渡ししたときに発生する条件付権利(622条の2第1項1号)であり、敷金は賃料等と当然に相殺されてしまうから、敷金返還請求権をもって相殺を主張することは主張自体失当である。

第4 設問4

 本件では、本件賃貸借契約を締結するに当たって、本件契約書を作成しているが、本件契約書は、意思表示をその文書によってされている文書である処分証書であり、本件契約書の形式的証拠力(文書の成立の真正)が認められれば、本件賃貸借契約締結の直接証拠として、実質的証拠力を特段の事情がない限り、問題とする余地がないため、Qは本件契約書の成立の真正について反証する必要がある。本件契約書にはYの印章による印影があるところ、本件契約書の成立の真正についての反証をまず検討する。

1 我が国では、通常印章は慎重に管理されており、第三者が容易に押印することができないという経験則がある。そこで、本人の印章による印影がある場合には、本人の意思に基づく押印であることが事実上推定され、民事訴訟法228条4項の推定と併せれば、文書の成立の真正が推定される(二段の推定)。

  本件で、Qは「Y名下の印影がYの印章によることは認めるが、Xが盗用した。」と主張していることから、一段目の推定について争っているといえる。本件契約書に押印してある印章による印影は、三文判でなされているところ、三文判は誰でも容易に入手することができ、X自身もYの三文判を調達して本件契約書に押印したといえる。また、Xが印鑑を調達していなかったとしても、Yとその妻がY宅を留守にしているときに、Xが居間の引き出しに保管していた印鑑を取り出して、Xが勝手に本件契約書に押印したといえる。そうだとすれば、第三者が容易に押印することができないという経験則が妥当せず、Yの意思に基づく押印が認められない。

  よって、本件契約書の成立の真正が認められない。

2 本件契約書の成立の真正が認められるとしても、以下の通り、特段の事情があるため、本件賃貸借契約を締結した事実が認められない。

  本件では、たしかに、Yは、令和2年7月30日、Xに対し、5万円を支払っているが、これは、甲建物の賃料として支払ったものではなく、Xから別で借りた5万円の借金について返済したものであるから、本件賃貸借契約が締結されていることを前提としているわけではない。また、通常、有償の建物賃貸借契約が締結されているのであれば、賃貸人は、毎月、賃料を請求してくることが考えられるが、令和2年の年末まで、Xから甲建物の賃料の支払を求められていない。そのため、有償である本件賃貸借契約は締結していないということが推認できる。さらに、賃貸借契約を締結したのであれば、契約書を作成し、敷金を差し入れるのが通常だが、XY間で甲建物の使用についての契約書は作成されていないし、敷金を差し入れたこともないので、本件賃貸借契約が締結されていないことが推認できる。

3 以上より、本件賃貸借契約を締結した事実が認められない。

 

R3予備論文 刑訴法

~感想~

・68分かかった。推定C、D

・この問題はぱっと見、簡単な問題だなと思ったから、とにかくまわりとの差を意識して、答案構成を行ったが、逆に空回りしすぎて、丁寧に考えすぎてしまった結果、時間がとてもシビアになってしまい、最後の方はスカスカになってしまった。

~再現答案~

第1 設問1

1 ①の逮捕は、無令状(憲法33条、刑事訴訟法(以下法令省略)199条1項本文)として行われているが、準現行犯逮捕(212条2項、213条)として適法か。

⑴ まず、甲が本件事件の被害品と特徴の一致するバッグを所持していたことから、Pは、甲らに対し、「I署の者ですが、話を聞きたいので、ちょっといいですか。」と声をかけたところ、甲らはいきなり逃げ出したことから、「誰何されて逃走しようとするとき」に当たる。

⑵ 次に、「明らか」とは、誤認逮捕を回避すべく、犯罪と犯人が明白であることを要する。

  本件についてみると、本件事件の犯行約20分後に、Pらが、Vから、犯人らの特徴と奪われたバッグの特徴を聞き出した上、Pらは、令和2年10月2日午後2時1分頃に犯人らと特徴の一致する2名の男が走り去っていき、そのうち1名が被害品と特徴の一致するバッグを所持していた様子をマンションの出入り口の防犯カメラ画像で確認した。そして、Pらは、その約1時間半後、V方から直線距離約5キロメートル離れた路上で、犯人らと特徴の一致する甲及びもう1名の男を発見し、甲が被害品と特徴の一致するバッグを持っていたことも確認している。そうだとすれば、短時間で、かつ、比較的近接した距離で上記の特徴と全く一致する者が犯人ではないことは経験則上考えにくいから、犯罪と犯人が明白といえ、「明らか」に当たる。

⑶ そして、「罪が行い終つてから間がない」とは、時間的場所的近接性をいうところ、Pらが甲を逮捕したのは、犯罪から約2時間も経過しており、逮捕場所もV宅から直線距離で約5キロメートルも離れていたことから、時間的場所的に近接していたとはいえず、「罪が終つてから間がない」に当たらない。

2 以上より、①の逮捕は、違法である。

第2 設問2

1 ②の措置はRによる接見指定(39条1項)であるが、②の措置は「捜査のため必要があるとき」(同条3項本文)といえるか。その意義が問題となる。

⑴ 接見交通権は弁護人依頼権(憲法34条前段)に由来する重要な権利であり、かかる権利を制約する場合は、限定的に解するべきである。

  そこで、「捜査のため必要があるとき」とは、捜査の中断による支障が顕著な場合をいうと考える。

⑵ 本件についてみると、弁解録取手続終了後、Rは、直ちに甲にナイフの投棄場所を案内させて、ナイフの発見、押収及び甲を立会人としたその場所の実況見分を実施しようと考え、捜査員や車両の手配をした。そうしたところ、S弁護士が接見申立てをしてきたが、接見を終えてからナイフの投棄場所へ出発したのでは、現場に到着する頃には辺りが暗くなることが見込まれており、甲以外の犯人が未だ逮捕されていないという事情も鑑みると、暗くなった後にはナイフという小さいものを探すのが困難であるし、その間にナイフをその犯人に回収されてしまうことが考えられる。そうだとすれば、接見を指定して、直ちに投棄場所に行ってナイフを発見、押収する捜査の必要性が高いといえる。

⑶ よって、②の措置は「捜査のため必要があるとき」に当たる。

2 もっとも、本件の接見は初回接見であり、②の措置は、「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するもの」(39条3項ただし書)として、違法とならないか。

⑴ 初回接見は、弁護人の選任を目的としており、弁護人の助言を得るための最初の機会であり、弁護人依頼権の保障の出発点をなすものであるため、これを速やかに行うことは被疑者の防禦の準備のため特に重要である。

  そこで、ⓐ捜査機関は弁護人と協議をし、ⓑ即時又は近接した時点での接見を認めても、接見の時間を指定すれば、捜査に顕著な支障が出るのを避けることができるか検討し、これが可能な場合には、特段の事情がない限り、即時又は近接した時点でも接見を認めるべきであり、初回接見を遅らせることは、「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するもの」に当たると考える。

⑵ 本件で、Rは、Sに対し、今から甲に案内させた上で実況見分を実施する予定があるため接見は午後8時以降にしてほしい旨述べた。これに対し、Sは、本日中だと同日午後5時30分からの30分間以外には接見の時間が取れず、翌日だと午前9時から接見の時間が取れるが、何とか本日中に接見したい旨述べた。Rは、引き続きSと協議を行うも、両者の意見は折り合わず、最終的にRは、Sの要望を全く受け入れることなく、一方的に②の措置を行った。そうだとすれば、捜査機関は弁護人と協議をしたとはいえない(ⓐ)。

  また、捜査要員を増員し、ナイフを捨てた場所のおおよそを甲から聞き出して、その周辺を立ち入り禁止にすれば、もう一人の犯人による証拠隠滅ができなくなるから、捜査による支障を避けることが可能であったといえ、特段の事情もない(ⓑ)。

⑶ よって、②の措置は「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するもの」に当たる。

3 以上より、②の措置は、違法である。