R3予備論文 刑事実務基礎科目


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~感想~

・95分(途中トイレに行った)。刑事単体で推定B、C

・事案自体に混乱することはなかった。読み解きやすい事案だったと思う。そのため、問題文の事情は比較的多く拾うことができたと思う。

・供述の信用性については、R1予備で出たから、当分出ないだろうと思って、ほとんど放置していた。後述の判断基準があっているのかわからないけど、論マスでやった規範を使った。使うべき場面を間違えたかもしれない。でも事実との一致等は書けているし、事実もほとんど拾える規範だから、問題はない気がするけど…。

~再現答案~

第1 設問1

1 小問1

  Aは本件被疑事実について、刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)207条1項本文、60条1項2号及び3号に当たるとして、勾留されているところ、本件の準抗告(429条1項2号)は各号(勾留の理由)に該当しないというものである。以下の通り、疎明資料ⓐ及びⓑを考慮して、Aは各号に該当しない。

⑴ 同項2号

ア 「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」とは、罪証隠滅の対象、その態様、その客観的可能性、主観的可能性により判断すると考える。

イ 本件についてみると、罪証隠滅の対象として、AのVやW等に対する威迫等による供述の変遷やAの友人等とのアリバイ工作が考えられるところ、ⓐによれば、Aに事件関係者と一切接触させないことを誓約するものであるから、Aは両親の監督の下、VやW等と接触することができず、罪証隠滅の客観的可能性が認められない。

  また、ⓑによれば、「Aには早く職場に復帰してもらい、継続的に働いてもらいたいです。」と記載されていることから、Aは会社の上司から信頼されており、この信頼は、仕事を今まで一生懸命やってきた成果といえるため、Aのような真摯な者が罪証隠滅をすることはなく、その主観的可能性は認められない。

ウ したがって、罪証隠滅のおそれはない。

⑵ 同項3号

ア 「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」とは、身を隠そうと伺われる事情、生活状況の安定性により判断すると考える。

イ 本件についてみると、ⓐによれば、Aの両親がAを両親の自宅で生活させ、両親が責任をもってAを監督する旨記載されているところ、Aは両親の監督下にあり、身を隠すことができないから、身を隠そうと伺われる事情はないといえる。

  また、ⓑによれば、AはAの勤務する会社にとって必要不可欠な人材であり、Aがいないと、Aが取ってきた商談が潰れてしまうほど、会社で重要な役割を果たしており、会社の上司も今後もAには継続して働いてほしいということを願っていることから、Aには継続的な収入があり、生活状況が安定しているといえる。

ウ したがって、逃亡のおそれはない。

⑶ よって、弁護人は上記のように準抗告申立書にⓐ及びⓑを添付すべきと判断したといえる。

2 小問2

裁判所は、以下の通り、弁護人の準抗告を棄却すべきと判断した。罪証隠滅のおそれと逃亡のおそれの判断は前述の基準により検討する。

⑴ 罪証隠滅のおそれについて

  罪証隠滅の対象は、前述のとおり、VやWの供述を変遷させたり、友人とのアリバイ工作をしたりすることが考えられるが、Aは犯行現場をもとにVやWのところへ行って、威迫をし、供述を変遷することができる。そして、疎明資料ⓐが存在しても、Aは両親の目を盗んで、外出し、VやW、友人のところへ行くことは容易にできるから、罪証隠滅の客観的可能性は認められる。また、Aは本件被疑事実を否認しており、犯行時刻頃には自宅にいた旨の供述をしていることから、罪証隠滅の主観的可能性も認められる。

  よって、Aには罪証隠滅のおそれがある。

⑵ 逃亡のおそれについて

  本件で、Aは本件被疑事実を否認しており、本件被疑事実は他人所有建造物等以外放火罪(刑法110条1項)と重大事件であるから、身を隠そうと伺われる事情が認められる。前述のとおり、Aは両親の目を盗んで、身を隠すことができるから、疎明資料ⓐがあっても、上記事情に変わりはない。また、たしかに、ⓑによれば、前述のとおり、継続的な収入は否定できないが、Aには貯金がほとんどなく、両親も収入は年金だけであるため、Aの生活は楽ではない。そのため、生活状況が安定しているとはいえない。

  よって、Aには逃亡のおそれがある。

第2 設問2

1 Wは、Aの犯人性についての供述をしているが、W供述の信用性が認められるかどうかは、ⅰ観察の正確性、ⅱ記憶の正確性、ⅲ犯人選別手続の正確性により判断すると考える。

2 まず、証拠②④によると、Wが、犯人の犯行を見ていた場所は、男が火をつけていた場所から6.8メートル離れていたが、付近に街灯があり、駐車場の敷地内にも照明があったので明るく、Ⓦ地点とⓍ地点の間に視界を遮る物は存在せず、Ⓦ地点に立ったWは、Ⓧ地点に立たせた身長170センチメートルの警察官の顔を識別できた。また、証拠⑤によれば、犯行当時、天候は晴れであった。そして、証拠⑮によれば、Wの視力は左右とも裸眼で1.2もあり、色覚異常もない。そうだとすれば、Wは犯人と目が合った際、はっきりと男の顔を見ることが可能であり、さらに、Wは男の顔を確認するために、すれ違って間近で見ていることから、観察の正確性が認められるといえる(ⅰ)。

  次に、証拠①②によれば、通報がされたのが令和2年1月9日午前1時3分というように、犯行直後にWは警察官に供述しており、④の実況見分調書も犯行から約2時間半足らずで作成されていることから、Wが27歳と若いことも鑑みれば、記憶の正確性も認められるといえる(ⅱ)。

  そして、証拠②によれば、30歳代くらいの小太りで、Wより身長が高く、170センチメートルくらいという犯人の身体の特徴、短めの黒髪で、眉毛が太く、垂れ目であったというマスクも眼鏡もしていない犯人の顔の特徴をWは確認している。証拠⑧⑨によれば、20枚の男性の顔写真の中にAがいることをWに告知せずに、Wに犯人がいるかの選別手続を行った際、Wは、前述の特徴と一致するAを引き当てることができている。かかる犯人選別手続の際、Aを誘導しているような事情もないから、犯人選別手続の正確性も認められる(ⅲ)。

3 以上より、検察官は、上記のように、W供述の信用性が認められると判断した。

第3 設問3

 検察官は、AとWとの間の遮へい措置(刑訴法157条の5第1項)のみを採るのが相当と考えているところ、ビデオリンク方式(157条の6第1項3号)を採用した場合、ビデオを通して、Wを証人尋問することになるが、対面で直接証人尋問するよりも、話し方や態度、ニュアンス等が伝わりにくい。前述のようにWの供述の信用性が高い本件では、対面で直接証人尋問を行う方が、W供述の説得力が増し、検察官に有利であるといえる。

また、Wは、傍聴人との遮へい措置(157条の5第2項)を希望しているが、傍聴人がいることによる緊張感を含めて信用性を吟味すべきであるから、かかる措置を採るのは相当でないといえる。

よって、検察官は上記のような思考過程を経たといえる。

第4 設問4

 見取り図等の図面を利用する場合には、裁判所の許可を要する(刑事訴訟規則190条の12第1項)ところ、その趣旨は、図面を示すことによって尋問者の望む答えを証人に促して証人に不当な影響を与えることがあるのでそれを防止する点にある。そうだとすれば、立会人の現場指示によって示した位置関係は、Wの供述の信用性に大きく影響を与える点で重要であるから、証人に視覚による影響を与えないようにするために、裁判長は、検察官に、記号が消されているか㋔の釈明を求めたといえる。