R3予備論文 民法


スポンサードリンク
 

~感想~

・75分くらいかかった。設問1はそれなりに書けているので推定D

民法を最初に検討したのだが、ここまで時間オーバーしたことが今までなかったので、めちゃくちゃ焦った。そのため、どうせ考えてもわからないし、後に響くと思い、最後は適当に書いた。問題文読みながら、特定の話や契約不適合の話がちらついたので、問題文を読むのがそもそも遅くなった。

・設問1について、論ナビではAランク論点(複合解除)だったので覚えていたけど、論マスでは問題としてない論点だったので、書き方に苦戦した。

・設問2について、書くべき論点は思いつくが、どう書けばいいか混乱しまくって、よくわからなかった。悪い評価は覚悟している。

~再現答案~

第1 設問1

 本件ワイン売買契約及び本件賃貸借契約の両方を解除(542条1項1号)することができるか。

1 まず、本件ワイン売買契約(555条)について、本件ワインは、令和3年8月30日未明の落雷による火災が原因で生じた冷蔵倉庫甲の内部の異常な高温によって、本件ワインは飲用に適さない程度に劣化してしまった。そして、本件ワインは他に同種同等のものが存在しないから、本件ワインは売り物として売ることができず、本件ワイン売買契約の引渡債務は社会通念上履行不能(412条の2第1項)であるといえる。そのため、「債務の全部の履行が不能」に当たるので、Aは解除の意思表示(540条1項)をして、本件ワイン売買契約を無催告解除することができる。

2⑴ 次に、本件賃貸借契約(601条)について、Aは、上記火災を原因とする高熱によって、甲の配電設備が故障し、空調機能が喪失したので、履行不能解除することができると主張する。これに対し、Bは、同日深夜までに配電設備の修理は完了し、甲の空調機能は復旧し、その使用には何らの支障がなくなっていることから、社会通念上履行不能とはならないと反論することが考えられる。よって、本件賃貸借契約は解除できないとも思える。

⑵ もっとも、本件賃貸借契約は本件ワインを保管するために締結しており、本件ワイン売買契約と密接に関連しているから、上記本件ワイン売買契約の履行不能を契機に本件賃貸借契約も履行不能とならないか。

ア そもそも、ある一つの契約の履行不能は他方の契約の履行不能とはならず、一方の履行不能を理由に他方の契約を解除することはできないのが原則である。

  しかし、二つ以上の契約の目的とするところが、相互に密接に関連付けられていて、一方の契約の債務が履行されなければ、他方の契約の目的が全体として達成できないような場合には、一方の履行不能を理由に他方の契約を解除することができると考える。

イ 本件についてみると、Aは、Bとの本件ワイン売買契約の交渉の際、本件ワインの引渡日までに高級ワインの保存に適した冷蔵倉庫を購入し又は賃借することを予定していることをBに対して伝えていた。しかし、Aは事業計画に適した冷蔵倉庫を見つけることができなかったので、Bに対して、適切な規模の冷蔵倉庫が見つかるまでの当面の保管場所として同人の所有する甲を借りたいと本件賃貸借契約締結の際に伝えた。そうだとすれば、両契約は本件ワインを販売するという共通の目的で締結されており、Aが甲以外の冷蔵倉庫を購入又は賃借できなかった事情を踏まえると、本件賃貸借契約は本件ワイン売買契約を前提としており、相互に密接に関連付けられているといえる。

ウ したがって、本件ワイン売買契約の履行不能を契機に本件賃貸借契約も履行不能となる。

3 以上より、Aは本件ワイン売買契約及び本件賃貸借契約の両方を解除することができ、Aの主張は認められる。

第2 設問2

1 ⑴について

  Cが、本件譲渡担保契約の有効性について、第三者に対して主張することができるためには、契約の目的物が特定されている必要がある。

⑴ まず、前提として倉庫丙内の酒類の所有権が本件譲渡担保契約により譲渡されている必要がある。そこで、譲渡担保の法的性質が問題となる。

ア 譲渡担保の法的性質は形式的に考えるべきであるから、所有権的に構成するべきであると考える。

イ したがって、丙内の酒類の所有権(206条)が本件譲渡担保契約により譲渡され得る(176条)。

⑵ 次に、本件譲渡担保契約によれば、丙内にある全ての酒類を目的物として、占有改定の方法(183条)により引き渡すとしているから、第三者対抗要件(178条)を具備している。

⑶ もっとも、本件譲渡担保契約の目的物は特定されているといえるか。

ア 譲渡担保の目的物の特定性の判断は、目的物の範囲、種類、数量等に照らして判断すると考える。

イ 本件譲渡担保契約では、Aは、AのCに対する本件金銭消費貸借契約に係る貸金債務を担保するために、丙内にある全ての酒類を目的物としており、丙内の酒類を第三者に譲渡した場合には、遅滞なく同種同品質の酒類を丙内に補充するとされているから、目的物の範囲、種類、数量等が特定されているといえる。

ウ したがって、本件譲渡担保契約の目的物は特定されているといえる。

⑷ よって、Cは、上記有効性について、第三者に対して主張することができる。

2 ⑵について

  Dが、Cに対して、本件ウイスキーの所有権を主張することができるためには、自己が本件ウイスキーの所有権を有し、本件ウイスキーに本件譲渡担保契約の効力が及ばないことを要する。

⑴ DとAは、本件ウイスキー売買契約の際、本件ウイスキーについて所有権留保特約を付けているのに対し、前述のとおり、Cは本件譲渡担保契約により、本件ウイスキーの所有権を有している。そして、通常の営業の範囲内では、本件譲渡担保契約の効力が本件ウイスキーに及ぶところ、Aは通常の営業の範囲外の処分をしていないため、なお本件譲渡担保契約の効力が本件ウイスキーに及び、Dはその所有権を有しているとも思える。しかし、Aは、同年11月10日、本件ウイスキーの代金1200万円をDに支払わなかったので、これにより、本件ウイスキーの所有権の処分権限をDは第三者に対抗することができる。その結果として、本件譲渡担保契約の効力が本件ウイスキーに及ばなくなるといえる。

⑵ よって、Dは、Cに対して、本件ウイスキーの所有権を主張することができる。